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川 ゚ -゚)正直者が夢を見るようです
221 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:08:48.55 ID:7z30BWBq0
私は大変な正直者である。
しかしそれは同時に融通が利かないともいえる。
今日も会社の就職面接だが、おそらくまた人事の連中に笑われて終わるのだろう。
学生時代に打ち込んだものは?
はい。漫画とアニメとオシャレな服を買うことです。
どうして授業単位を落としたのですか?
朝に弱いからです。
サークルや部活に入らなかったのは?
コミュニケーション能力に自信がなく、また家で一人でいる方が楽だからです。
生き残る訳がないのだ。
たてまえばかりが横行するこの現代社会で、私のようなお粗末な正直者など。
223 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:11:14.85 ID:7z30BWBq0
川 ゚ -゚)正直者が夢を見るようです
今まで受けた会社は八社全て落ちている。
今ではもう業界を絞らずに、交通費が安ければ何処にでも出向く覚悟でいる。
(-@∀@)「今日の審査を受ける方ですね。お待ちしておりました」
会社に入ると、さっそく人事の者が私を待ち受けていた。
225 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:14:27.40 ID:7z30BWBq0
川 ゚ -゚)「VIP大学から参りました。素直クーと申します。
今日はよろしくお願いします」
(-@∀@)「よろしくお願いします。さて4階で試験を受けて頂くのですが、
階段を上る前にこれを身につけて頂けますか?」
メガネのよく似合う男の人事から渡されたのは、
一見するとリストバンドに見える小物だった。
(-@∀@)「時計をつけていない方の手におつけ下さい。
社内ではセキュリティが完備されておりまして、このリストバンドを
身につけていない者が不用意に社内を歩くと、警報が鳴り出してしまうのです」
なるほど。
この会社はいわゆるIT系の企業で、会社内での情報セキュリティにも力を入れているのだろう。
227 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:16:39.92 ID:7z30BWBq0
断る理由もないのでリストバンドを身につけ、4階へ向かう。
ζ(゚ー゚*ζ「おはようございます」
川 ゚ -゚)「おはようございます」
4階には綺麗な女性の方がいて、私を見かけるとすぐに挨拶を交わしてくれた。
彼女も人事の人間なのだろう。
ζ(゚ー゚*ζ「中にお入り下さい。すぐに試験を始めます」
川 ゚ -゚)「あ…もしかして遅刻してしまったのでしょうか?」
ζ(゚ー゚*ζ「いえ、時間には間に合っております。ただあなたが最後でしたので」
229 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:19:53.64 ID:7z30BWBq0
時間に間に合っている以上私に非はないのだが、何だかばつが悪い。
部屋の中に通されると、長机がたったの二つだけ用意されていて、
三人の男女と、一つの空席があった。
今回の審査はたったの四人で行うということか。
ウェブ上で提出するエントリーシートを通った者だけがこの審査に呼ばれるのだが、
まさかたったの四人しか合格していないとは。
(-@∀@)「皆様、お待たせしました。それでは審査について説明していきます」
私が席に着くと、一階にいたメガネの彼が部屋に入ってきた。
四人しかいないとなると、審査に関わる人事部の人間も相応に少ないようだ。
230 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:22:56.10 ID:7z30BWBq0
(-@∀@)「試験は事前に説明していた通り、まず適性検査。
これはマークシート式のテストで、10分ほどで終わります。
続いて筆記試験。当社で用意した国語、数学、そして常識問題でテストを行います。
最後に面接となります。なお、面接は四人同時に行います」
私は彼の最後の言葉に注目した。
四人同時に行う。つまり集団面接だ。
私は集団面接が嫌いだ。大嫌いだ。最低だと思う。
恥をかくならせめて人事の人の前だけにしたい。
同じ就活性のくせに私のことを心の中で笑っているのだと考えると、
腹が立って仕方がない。
232 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:26:30.38 ID:7z30BWBq0
しかし、そもそも面接が下手な自分を恥ずべきなのだろう。
だがやはり、集団面接と聞いて落ち込まずにはいられない。
とにもかくにも試験は始まった。
まずは適性検査。
適性検査の問題数は何と100問。
10分という時間設定にしては随分と問題数が多い。
頭の回転には自信はあるが、答えをじっくり考える暇などなく、
これではまず嘘はつけないだろう。
そもそも適性検査で嘘をつくのは意味がないと聞いたことがある。
まあ、元々正直者の私にはあまり関係のないことだ。
233 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:28:32.95 ID:7z30BWBq0
続いて筆記試験だ。
漢字のど忘れ以外は全て解けた。
常識問題もある程度は予習済みだったので、まずまずの結果だったろう。
そして問題の集団面接の時間となった。
(-@∀@)「では…」
ζ(゚ー゚*ζ「はい」
メガネの彼が目配せをすると、人事の女性は奥の部屋に引っ込んだ。
奥の部屋で面接を行うのだろうか。
234 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:31:01.85 ID:7z30BWBq0
(-@∀@)「面接はこの部屋で行います。
机にキャスターがついておりますので、壁の方によけておいてくれますかね」
川 ゚ -゚)「え…」
何という……段取りの悪さというか、適当さだろうか。
いくら就活生が立場上逆らえないとはいえ、一応は企業のお客様であるはずだ。
しかしここで文句を言っても空しいだけだ。
私は他の就活生と一緒に机を壁際に移動させた。
(-@∀@)「では椅子を四つ、一列に並べて下さい」
はいはい。
今だけは木偶のように従ってあげよう。
236 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:33:08.00 ID:7z30BWBq0
椅子を並び終えると面接が始まった。
最初から部屋にいる状態から面接が始まったのは初めてだ。
(-@∀@)「では、左の方から自己紹介をお願いします」
私の自己紹介は最後になるらしい。
( ・∀・)「私は創作大学から参りました、モララーと申します。学生時代は野球サークルに打ち込み…」
スタイルのよい、顔の整ったモララーの自己紹介が始まる。
彼は見た目通りの爽やかスポーツマンなのだという。
実体は知らないが。
238 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:36:19.23 ID:7z30BWBq0
('A`)「私は青ホラ学院から参りました。ドクオと申します。
得意科目はプログラミングで、学生時代は寝食を忘れるほどプログラミングに熱中し……」
二番目のドクオは勉強に打ち込んだ真面目くんらしい。
こういう男ほど変態なのだ。
ξ゚⊿゚)ξ「私はシベリア大学から参りました。ツンデレと申します。
私は新しいことに挑戦するのが好きで、大学時代は多数のサークルを経験し、
また学生時代に各国の文化に触れたいという気持ちがあって……」
三番目のツンデレは英語が堪能で好奇心の強い女の子、らしい。
化粧の仕方が上手く、スーツの着こなしも決まっている気がする。
もてそうだ。
241 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:38:28.80 ID:7z30BWBq0
(-@∀@)「はい、ありがとうございました。ではクーさん、どうぞ」
処刑の時間が始まる。
川 ゚ -゚)「私はVIP大学から参りました。素直クーと申します。
学生時代はサークルや部活などには入っておりませんでしたが、
観たかったアニメは必ず観るようにしていました。
勉強もテストが近くなると過去問を使って単位だけは落とさないようにしていました。
バイトは特にしませんでしたが、浪費もしていないです」
(-@∀@)「…………あー…以上で?」
川 ゚ -゚)「はい」
243 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:41:16.87 ID:7z30BWBq0
(-@∀@)「はい、ありがとうございました。ではご着席下さい」
( ・∀・)「失礼します」
('A`)「失礼します」
ξ゚⊿゚)ξ「失礼します」
川 ゚ -゚)「失礼します」
続いて志望動機を順に聞かれていった。
モララーは御社の企業理念に、ドクオはソフトウェア開発に従事するために、
ツンデレは挑戦が好きな自分とのマッチングを見据えて、私は
川 ゚ -゚)「家に近いからです」
他の三人が心の中で笑っている声が聞こえる気がするようだ。
誰だろう、面接で一番大事なのは素直になることだなんて言ったのは。
246 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:44:31.43 ID:7z30BWBq0
面接が進めば進むほど、
私はどうしようもない人間というレッテルを何十にも貼られることになる。
対照的に、他の者たちは熱心に仕事に打ち込める気概のある
高い処理能力を持った周りとの協調性を大事にする真面目な人間になっていく。
そんなの、全て嘘だ。嘘に決まってる。
誰だって楽したい、働きたいのはお金が欲しいだけ、学生時代に一番
打ち込んだのは飲み会かデート、それが真実のはずなのに。
川 ゚ -゚)「本日は貴重なお時間を頂き、誠にありがとうございました」
下げた頭を中々上げられなかった。
私はどこに出しても恥ずかしい、最低の正直者。
249 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:47:15.17 ID:7z30BWBq0
帰り道のコンビニの前で、審査を受けた他の三人の姿があった。
ξ*゚⊿゚)ξ「マジ笑いこらえるの苦労したって!」
( *・∀・)「ですよね! あれ、ウケ狙いだったのかなあ」
(*'∀`)「笑い話のネタが増えましたね」
私はしばらく電柱の影に隠れて、三人が何処かに行くのを待った。
三人が消えてからコンビニに入り、144円のコーヒーを買った。
いつもより20円ほど高いのは、自分にお疲れ様だと言いたかったから。
251 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:49:56.53 ID:7z30BWBq0
自分が正しいとは決して思わない。
たてまえが悪いとも思わない。
私は人の陰口を絶対に言わない。
でも嘘をついて褒めたりすることも出来ない。
私は話を誇張して話すことができない。
誰かを笑わせた経験は少ない。
笑われることはよくある。
私は何処でも浮いている。
川 ゚ -゚)ズズズ……
川 ゚ -゚)(ホットにしておけば良かったかな)
255 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:53:09.52 ID:7z30BWBq0
数日後、他に説明会が無いかエントリーした企業を漁っていた。
そこに一本の電話がかかってくる。
フリーダイアルだ。
川 ゚ -゚)「はい。もしもし」
「もしもし、素直クー様の携帯でしょうか?」
川 ゚ -゚)「はい、そうです」
「株式会社VERAの人事担当をしております、あさぴーと申します。
ただいまお時間大丈夫でしょうか?」
ああ…またあの言葉を聞かなくてはいけない。
私は辟易する。
258 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:56:17.74 ID:7z30BWBq0
誰かに祈る暇があるなら、自分の会社の将来でも祈っていればいいのだ。
川 ゚ -゚)「先日は大変お世話になりました」
「こちからこそありがとうございました。
つきましては、先日行われた選考の結果をご報告するためにお電話させて頂きました」
川 ゚ -゚)「あの…宜しければ落ちた理由を聞かせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「はい?」
川 ゚ -゚)「今後の選考に生かしたいので……」
「あ……そうではなくてですね」
川 ゚ -゚)「?」
261 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:59:09.73 ID:7z30BWBq0
「率直にいうと、合格したというご報告です」
川 ゚ -゚)「え?」
「おめでとうございます。ちなみに採点はほぼ満点でした。
筆記試験の漢字の書き取り以外は全て好成績です」
頭がぐるぐると回る。
もしかして自分は悪い薬でもやって夢を見ているのだろうか。
川 ゚ -゚)「そ…あ、ありがとうございます。信じられないです……」
「もしかして、他の企業の内定がお決まりになったのですか? 声がお暗いように感じますが…」
川 ゚ -゚)「いえ! そんな、とんでもありません。本当にありがとうございます」
266 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 01:01:54.16 ID:7z30BWBq0
「つきましては最終選考のお知らせをしたいのですが、
その前に一つ謝らなくてはならないことがあります」
まだ夢を見ているようなふわふわした心地の中で、
彼の声が妙に強ばったのを敏感に感じた。
川 ゚ -゚)「謝らないといけないこと?」
「弊社では就職試験に関して特殊な審査を実施しております。
それは審査を受ける方には秘密のもので、一次審査を合格した方の身にお教えしております」
川 ゚ -゚)「あの…それは一体」
274 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 01:04:52.22 ID:7z30BWBq0
「あの日、あなたにリストバンドをお渡ししたのを覚えていらっしゃいますか?」
川 ゚ -゚)「ええ…」
「実はあのリストバンドに組み込まれていた心拍数、発汗率、その他体の
反射反応を調べる装置がついておりまして、嘘をついたときの反応をこちらで調べていたのです」
そういえば、デレは最後まで部屋から出てこなかった。
もしかするとあの部屋で何か私たちの体の反応…つまり、嘘をついているかどうかを
モニタしていたのだろうか。
「本来は嘘で塗り固めた人物を落とすためのものですが、あなたは素晴らしかった。
一切の嘘が無かったんです。これには我が社のCEOを舌を巻きました」
川 ゚ -゚)「あ…それは、光栄です」
282 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 01:09:23.96 ID:7z30BWBq0
嘘発見器に引っかかるはずがない。
私は嘘をつきたくても嘘がつけないのだ。
いつも馬鹿を見てきた、正直者。
「最終面接ではリストバンドはつけません。
あなたなら安心ですしね。それと一つだけご忠告しておきます」
川 ゚ -゚)「はい。何でしょうか」
「社長はとても不細工な方なので、顔について触れないで下さい」
川 ゚ -゚)「………大丈夫です」
「それでは日程の方お知らせします。メモのご準備は――――」
284 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 01:11:34.02 ID:7z30BWBq0
嘘をつけない人ばかりがいる会社なのだろうか。
愛想笑いは無し。自慢話は無し。世間話は平凡なものばかり。
褒めることも褒められることも少ない。
それはそれで……味気ないかもしれない。
いや、もしかすると楽園なのかもしれない。
嘘ばかりの世界は私を笑いものにした。
私は真実の中で生きるのだ。
それに何と言っても、
あの会社は私の家から徒歩で2分なのだ。
朝が弱い私にとって、これ以上の楽園はないのである。
285 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 01:11:59.17 ID:7z30BWBq0
終わり
296 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 01:16:20.75 ID:7z30BWBq0
今日就職面接だったから何か思いついて投下しました
支援ありがとうでした
私は大変な正直者である。
しかしそれは同時に融通が利かないともいえる。
今日も会社の就職面接だが、おそらくまた人事の連中に笑われて終わるのだろう。
学生時代に打ち込んだものは?
はい。漫画とアニメとオシャレな服を買うことです。
どうして授業単位を落としたのですか?
朝に弱いからです。
サークルや部活に入らなかったのは?
コミュニケーション能力に自信がなく、また家で一人でいる方が楽だからです。
生き残る訳がないのだ。
たてまえばかりが横行するこの現代社会で、私のようなお粗末な正直者など。
223 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:11:14.85 ID:7z30BWBq0
川 ゚ -゚)正直者が夢を見るようです
今まで受けた会社は八社全て落ちている。
今ではもう業界を絞らずに、交通費が安ければ何処にでも出向く覚悟でいる。
(-@∀@)「今日の審査を受ける方ですね。お待ちしておりました」
会社に入ると、さっそく人事の者が私を待ち受けていた。
225 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:14:27.40 ID:7z30BWBq0
川 ゚ -゚)「VIP大学から参りました。素直クーと申します。
今日はよろしくお願いします」
(-@∀@)「よろしくお願いします。さて4階で試験を受けて頂くのですが、
階段を上る前にこれを身につけて頂けますか?」
メガネのよく似合う男の人事から渡されたのは、
一見するとリストバンドに見える小物だった。
(-@∀@)「時計をつけていない方の手におつけ下さい。
社内ではセキュリティが完備されておりまして、このリストバンドを
身につけていない者が不用意に社内を歩くと、警報が鳴り出してしまうのです」
なるほど。
この会社はいわゆるIT系の企業で、会社内での情報セキュリティにも力を入れているのだろう。
227 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:16:39.92 ID:7z30BWBq0
断る理由もないのでリストバンドを身につけ、4階へ向かう。
ζ(゚ー゚*ζ「おはようございます」
川 ゚ -゚)「おはようございます」
4階には綺麗な女性の方がいて、私を見かけるとすぐに挨拶を交わしてくれた。
彼女も人事の人間なのだろう。
ζ(゚ー゚*ζ「中にお入り下さい。すぐに試験を始めます」
川 ゚ -゚)「あ…もしかして遅刻してしまったのでしょうか?」
ζ(゚ー゚*ζ「いえ、時間には間に合っております。ただあなたが最後でしたので」
229 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:19:53.64 ID:7z30BWBq0
時間に間に合っている以上私に非はないのだが、何だかばつが悪い。
部屋の中に通されると、長机がたったの二つだけ用意されていて、
三人の男女と、一つの空席があった。
今回の審査はたったの四人で行うということか。
ウェブ上で提出するエントリーシートを通った者だけがこの審査に呼ばれるのだが、
まさかたったの四人しか合格していないとは。
(-@∀@)「皆様、お待たせしました。それでは審査について説明していきます」
私が席に着くと、一階にいたメガネの彼が部屋に入ってきた。
四人しかいないとなると、審査に関わる人事部の人間も相応に少ないようだ。
230 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:22:56.10 ID:7z30BWBq0
(-@∀@)「試験は事前に説明していた通り、まず適性検査。
これはマークシート式のテストで、10分ほどで終わります。
続いて筆記試験。当社で用意した国語、数学、そして常識問題でテストを行います。
最後に面接となります。なお、面接は四人同時に行います」
私は彼の最後の言葉に注目した。
四人同時に行う。つまり集団面接だ。
私は集団面接が嫌いだ。大嫌いだ。最低だと思う。
恥をかくならせめて人事の人の前だけにしたい。
同じ就活性のくせに私のことを心の中で笑っているのだと考えると、
腹が立って仕方がない。
232 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:26:30.38 ID:7z30BWBq0
しかし、そもそも面接が下手な自分を恥ずべきなのだろう。
だがやはり、集団面接と聞いて落ち込まずにはいられない。
とにもかくにも試験は始まった。
まずは適性検査。
適性検査の問題数は何と100問。
10分という時間設定にしては随分と問題数が多い。
頭の回転には自信はあるが、答えをじっくり考える暇などなく、
これではまず嘘はつけないだろう。
そもそも適性検査で嘘をつくのは意味がないと聞いたことがある。
まあ、元々正直者の私にはあまり関係のないことだ。
233 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:28:32.95 ID:7z30BWBq0
続いて筆記試験だ。
漢字のど忘れ以外は全て解けた。
常識問題もある程度は予習済みだったので、まずまずの結果だったろう。
そして問題の集団面接の時間となった。
(-@∀@)「では…」
ζ(゚ー゚*ζ「はい」
メガネの彼が目配せをすると、人事の女性は奥の部屋に引っ込んだ。
奥の部屋で面接を行うのだろうか。
234 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:31:01.85 ID:7z30BWBq0
(-@∀@)「面接はこの部屋で行います。
机にキャスターがついておりますので、壁の方によけておいてくれますかね」
川 ゚ -゚)「え…」
何という……段取りの悪さというか、適当さだろうか。
いくら就活生が立場上逆らえないとはいえ、一応は企業のお客様であるはずだ。
しかしここで文句を言っても空しいだけだ。
私は他の就活生と一緒に机を壁際に移動させた。
(-@∀@)「では椅子を四つ、一列に並べて下さい」
はいはい。
今だけは木偶のように従ってあげよう。
236 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:33:08.00 ID:7z30BWBq0
椅子を並び終えると面接が始まった。
最初から部屋にいる状態から面接が始まったのは初めてだ。
(-@∀@)「では、左の方から自己紹介をお願いします」
私の自己紹介は最後になるらしい。
( ・∀・)「私は創作大学から参りました、モララーと申します。学生時代は野球サークルに打ち込み…」
スタイルのよい、顔の整ったモララーの自己紹介が始まる。
彼は見た目通りの爽やかスポーツマンなのだという。
実体は知らないが。
238 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:36:19.23 ID:7z30BWBq0
('A`)「私は青ホラ学院から参りました。ドクオと申します。
得意科目はプログラミングで、学生時代は寝食を忘れるほどプログラミングに熱中し……」
二番目のドクオは勉強に打ち込んだ真面目くんらしい。
こういう男ほど変態なのだ。
ξ゚⊿゚)ξ「私はシベリア大学から参りました。ツンデレと申します。
私は新しいことに挑戦するのが好きで、大学時代は多数のサークルを経験し、
また学生時代に各国の文化に触れたいという気持ちがあって……」
三番目のツンデレは英語が堪能で好奇心の強い女の子、らしい。
化粧の仕方が上手く、スーツの着こなしも決まっている気がする。
もてそうだ。
241 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:38:28.80 ID:7z30BWBq0
(-@∀@)「はい、ありがとうございました。ではクーさん、どうぞ」
処刑の時間が始まる。
川 ゚ -゚)「私はVIP大学から参りました。素直クーと申します。
学生時代はサークルや部活などには入っておりませんでしたが、
観たかったアニメは必ず観るようにしていました。
勉強もテストが近くなると過去問を使って単位だけは落とさないようにしていました。
バイトは特にしませんでしたが、浪費もしていないです」
(-@∀@)「…………あー…以上で?」
川 ゚ -゚)「はい」
243 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:41:16.87 ID:7z30BWBq0
(-@∀@)「はい、ありがとうございました。ではご着席下さい」
( ・∀・)「失礼します」
('A`)「失礼します」
ξ゚⊿゚)ξ「失礼します」
川 ゚ -゚)「失礼します」
続いて志望動機を順に聞かれていった。
モララーは御社の企業理念に、ドクオはソフトウェア開発に従事するために、
ツンデレは挑戦が好きな自分とのマッチングを見据えて、私は
川 ゚ -゚)「家に近いからです」
他の三人が心の中で笑っている声が聞こえる気がするようだ。
誰だろう、面接で一番大事なのは素直になることだなんて言ったのは。
246 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:44:31.43 ID:7z30BWBq0
面接が進めば進むほど、
私はどうしようもない人間というレッテルを何十にも貼られることになる。
対照的に、他の者たちは熱心に仕事に打ち込める気概のある
高い処理能力を持った周りとの協調性を大事にする真面目な人間になっていく。
そんなの、全て嘘だ。嘘に決まってる。
誰だって楽したい、働きたいのはお金が欲しいだけ、学生時代に一番
打ち込んだのは飲み会かデート、それが真実のはずなのに。
川 ゚ -゚)「本日は貴重なお時間を頂き、誠にありがとうございました」
下げた頭を中々上げられなかった。
私はどこに出しても恥ずかしい、最低の正直者。
249 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:47:15.17 ID:7z30BWBq0
帰り道のコンビニの前で、審査を受けた他の三人の姿があった。
ξ*゚⊿゚)ξ「マジ笑いこらえるの苦労したって!」
( *・∀・)「ですよね! あれ、ウケ狙いだったのかなあ」
(*'∀`)「笑い話のネタが増えましたね」
私はしばらく電柱の影に隠れて、三人が何処かに行くのを待った。
三人が消えてからコンビニに入り、144円のコーヒーを買った。
いつもより20円ほど高いのは、自分にお疲れ様だと言いたかったから。
251 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:49:56.53 ID:7z30BWBq0
自分が正しいとは決して思わない。
たてまえが悪いとも思わない。
私は人の陰口を絶対に言わない。
でも嘘をついて褒めたりすることも出来ない。
私は話を誇張して話すことができない。
誰かを笑わせた経験は少ない。
笑われることはよくある。
私は何処でも浮いている。
川 ゚ -゚)ズズズ……
川 ゚ -゚)(ホットにしておけば良かったかな)
255 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:53:09.52 ID:7z30BWBq0
数日後、他に説明会が無いかエントリーした企業を漁っていた。
そこに一本の電話がかかってくる。
フリーダイアルだ。
川 ゚ -゚)「はい。もしもし」
「もしもし、素直クー様の携帯でしょうか?」
川 ゚ -゚)「はい、そうです」
「株式会社VERAの人事担当をしております、あさぴーと申します。
ただいまお時間大丈夫でしょうか?」
ああ…またあの言葉を聞かなくてはいけない。
私は辟易する。
258 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:56:17.74 ID:7z30BWBq0
誰かに祈る暇があるなら、自分の会社の将来でも祈っていればいいのだ。
川 ゚ -゚)「先日は大変お世話になりました」
「こちからこそありがとうございました。
つきましては、先日行われた選考の結果をご報告するためにお電話させて頂きました」
川 ゚ -゚)「あの…宜しければ落ちた理由を聞かせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「はい?」
川 ゚ -゚)「今後の選考に生かしたいので……」
「あ……そうではなくてですね」
川 ゚ -゚)「?」
261 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 00:59:09.73 ID:7z30BWBq0
「率直にいうと、合格したというご報告です」
川 ゚ -゚)「え?」
「おめでとうございます。ちなみに採点はほぼ満点でした。
筆記試験の漢字の書き取り以外は全て好成績です」
頭がぐるぐると回る。
もしかして自分は悪い薬でもやって夢を見ているのだろうか。
川 ゚ -゚)「そ…あ、ありがとうございます。信じられないです……」
「もしかして、他の企業の内定がお決まりになったのですか? 声がお暗いように感じますが…」
川 ゚ -゚)「いえ! そんな、とんでもありません。本当にありがとうございます」
266 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 01:01:54.16 ID:7z30BWBq0
「つきましては最終選考のお知らせをしたいのですが、
その前に一つ謝らなくてはならないことがあります」
まだ夢を見ているようなふわふわした心地の中で、
彼の声が妙に強ばったのを敏感に感じた。
川 ゚ -゚)「謝らないといけないこと?」
「弊社では就職試験に関して特殊な審査を実施しております。
それは審査を受ける方には秘密のもので、一次審査を合格した方の身にお教えしております」
川 ゚ -゚)「あの…それは一体」
274 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 01:04:52.22 ID:7z30BWBq0
「あの日、あなたにリストバンドをお渡ししたのを覚えていらっしゃいますか?」
川 ゚ -゚)「ええ…」
「実はあのリストバンドに組み込まれていた心拍数、発汗率、その他体の
反射反応を調べる装置がついておりまして、嘘をついたときの反応をこちらで調べていたのです」
そういえば、デレは最後まで部屋から出てこなかった。
もしかするとあの部屋で何か私たちの体の反応…つまり、嘘をついているかどうかを
モニタしていたのだろうか。
「本来は嘘で塗り固めた人物を落とすためのものですが、あなたは素晴らしかった。
一切の嘘が無かったんです。これには我が社のCEOを舌を巻きました」
川 ゚ -゚)「あ…それは、光栄です」
282 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 01:09:23.96 ID:7z30BWBq0
嘘発見器に引っかかるはずがない。
私は嘘をつきたくても嘘がつけないのだ。
いつも馬鹿を見てきた、正直者。
「最終面接ではリストバンドはつけません。
あなたなら安心ですしね。それと一つだけご忠告しておきます」
川 ゚ -゚)「はい。何でしょうか」
「社長はとても不細工な方なので、顔について触れないで下さい」
川 ゚ -゚)「………大丈夫です」
「それでは日程の方お知らせします。メモのご準備は――――」
284 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 01:11:34.02 ID:7z30BWBq0
嘘をつけない人ばかりがいる会社なのだろうか。
愛想笑いは無し。自慢話は無し。世間話は平凡なものばかり。
褒めることも褒められることも少ない。
それはそれで……味気ないかもしれない。
いや、もしかすると楽園なのかもしれない。
嘘ばかりの世界は私を笑いものにした。
私は真実の中で生きるのだ。
それに何と言っても、
あの会社は私の家から徒歩で2分なのだ。
朝が弱い私にとって、これ以上の楽園はないのである。
285 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 01:11:59.17 ID:7z30BWBq0
終わり
296 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/09(木) 01:16:20.75 ID:7z30BWBq0
今日就職面接だったから何か思いついて投下しました
支援ありがとうでした






徒歩二分はこれ以上にない楽園だなw